時雨 2009年11月10日 時折僕はふと考える こんなやり方は実は正しいのだろうかって 後悔だけは死んでもしたくないと いつも急き立てられるように生きて来たものの 何も残せず何も変えられなかった 立ちはだかる見えない敵は 嘲るように今日も上から僕を見下ろしている ただすいませんと謝ってしまえばいい 小さく隅で目立たぬように 波風立てない道を選んで そっと伏目がちに歩けばいい 誰にも気付かれ…続きを読む
天空のローブ 2009年10月05日 小さな小さな風穴は やがて大きな流れを起こし 眠れる情は止め処なく溢れ出て みるみる間に機となる その魂の形にも似た 音色粒を編むように 言葉を重ねて紡ぐ糸 何処か浮世と掛け離れ 禁断の浦へ通づる者は 果てる事無き試練を背負い この先どんな出会いにも 心を躍らせる事は無い それでも 私が選んだ道だから 一生お慕い申し上げます あなたがあの時一瞬で…続きを読む
13の夏 2009年09月14日 夏の終わりの雲は僕に 話し掛けているよな気がしてさ こっそり誰も見ていない屋上で 「なんか用」って返事をしたら 「僕はもう少しここにいたいんだけれど もう直ぐ迎えが来るんだよね」って 僕はまだまだ一緒にいたかったから 「ええっやっと話せたばかりなのに」って言ったら 「内緒だよ」って大きな手を伸ばして そして僕の頭を撫ぜて笑った 「ほら もう大丈夫 君は今年も…続きを読む
幸福な結末 2009年07月19日 小さくて儚い望みを その日の糧にして 何とか生き繋いで来たけれど もう全てが遅過ぎたのか 終わったのか それが最後のチャンスか 試練だったのか 人の心の複雑と 何より君の変心が 私の胸に突き刺さり 思考全てを停止させる あなたは私に命を吹き込み 生きる知恵と勇気を与え 愛する事は歌う事と 諭してそれから飼い殺しにした 喜びに震える瞳は 日を追って見事に凍り付き…続きを読む
僕ism 2009年01月19日 やるっきゃないでしょやれなくても 犠牲を払うのもまた仕方無い事さ それでどんなに誤解を受けようが やらないでいる僕ならもういらない やらないでいる僕にもう居場所はない 誰かが見てなくても 誰もが望んで無くても 精一杯穴を掘って打ち立てるんだ 最初はヨレヨレのTシャツに描いた 決意と希望の星を掲げて ああでもどこか頼りなげだな 同じように生まれて同じように乳飲んで育…続きを読む
ロマンス 2008年12月16日 人には誰にも言えない秘密があるのだと 知ったのはいつの頃からでしょう 僕が汚してしまった 君の涙を 君の痛みを 分かち合うことさえせずに 笑って踏み付けにした 心の中ではいつでも 「ごめん」って言っているんだ 心の中ではいつでも 「すまない」って囁いているんだ でも言葉には出来ない 卑怯でも卑劣でもいいよこのまま 罪を背負って生きて行くんだ 僕の口を割ろう…続きを読む
挑戦権を私に 2008年12月15日 もう人のものだからとて 奪っちゃいけない? 奪っちゃいけないの? 大体どちらが先とかやらで 人生全てが決まってしまうなら 契ったその場で轡をかませて 二度と世間に目が向かないように 去勢しちゃえば良かったじゃない 少なくとも私の前には 現れないで欲しかった どうせなら 納得行く言い訳を どうせなら 納得行くさよならを どうせなら どうせなら 一度で…続きを読む
Dead end (創作詩) 2008年12月13日 会いたい 会いたい ただそれだけなのに叶わない 一日の記憶 一日の喪失 死にひた走っている私 それに追従するあなた どこかで間違ったのかと 振り向いたけど誰もいない ただ電柱の影で泣いているあの娘は よく見たら幼い頃の私のままで ねえ誰も繋いでくれない右手を 大切に思ってくれる人などいるの ねえ誰にも抱いて貰えない身体 魚の餌にでもなれば…続きを読む
征服してよ 2008年12月04日 私の手首から足の先まで うなじから髪の先まで あなたのものよ あなたのものよ だけど心は贅沢だわ 色んなものが欲しくなる あのタワーの上の星とか ショーウィンドの透き通った箱とか いきなり困らせてみたくなって 詰まらない振りをしてみるの 本当は あなたにもう首ったけ あなたにもう首ったけ 今このまま時間を忘れて 動けないまま体を重ねて 汗ばむ…続きを読む
まだ自伝は書けない 2008年12月03日 君がこのまま 無名のまま旅立って行くなど 僕は許せない 君の音楽で僕は笑い 君の音楽で僕は震えた 時には空さえ飛べるように浮き足立ち また時には誰も知らない朝靄の湖の 水面に泡立つ魚の吐息のように 秘めやかで厳かな音色を奏でる 僕は長い事生きて来て やっと一つの事に気付いた どれほどの音楽が日常に溢れていても 本当に大切なものは僅かなのだと 時を経て粛清され…続きを読む